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【国際】

肺炎震源、医療の崩壊 中国・湖北省で脳性まひ患者、放置され死亡

死亡したエン成さん(手前)と弟=「大米と小米」提供(一部画像処理)

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 【北京=坪井千隼、中沢穣】新型コロナウイルスによる肺炎が蔓延(まんえん)する中国湖北省で、医療や福祉が崩壊の瀬戸際にある。もともと貧弱な医療体制は正確な感染者数の把握すらできず、現場の医師は「公表される感染者数は氷山の一角だ」と訴える。一方、一人での生活が困難な脳性まひの少年が、家族が隔離された後に死亡する悲劇も起きた。

 「なぜ息子は死んだのか、真実を知りたい」。障害者支援組織「大米と小米」によると、同省黄岡市のエン小文(えんしょうぶん)さん(49)は、脳性まひの長男エン成(せい)さん(17)の死を電話で知った。「まだ隔離が続き、息子の顔も見られない」と嘆いたという。

 エンさんは一月二十三日から保健当局によって自閉症の次男とともに隔離された。春節(旧正月)で同省武漢市から隣の黄岡市の実家に戻った際に、少し熱が出たためだ。エンさんは取り残された成さんの世話を保健当局などに頼んだが、その後に成さんも発熱。「防護服がない」などの理由で放置された成さんは二十九日、隔離施設に運ばれた二時間後に死亡が確認された。

 「大米と小米」によると、一家がそろって感染し、障害者が窮地に追い込まれる例が相次いでいる。エンさん一家は母親が約十年前に自殺し、おばも体調を崩していた。担当者は電話取材に「政府や社会全体が関心を払うべきだ」と話す。

 一方、武漢の病院ではベッドや人手の不足が続き、患者が待合室や廊下にあふれる。高熱が出ても入院先が見つからず、自宅療養を強いられる患者は少なくない。いら立った患者の家族らが、医師などに暴力を振るう事件も多発している。

 感染する医療関係者も多い。ある病院の医師は電話取材に「六十人の医師・看護師のうち、少なくとも十五人が感染しているが、熱が出た三、四人以外は仕事を続けている」と話す。自身にもせきなどの症状があるが、自ら点滴を打って昼夜二交代の勤務を続ける。

 検査キット不足は深刻だ。この医師も感染の有無を確認できていない。新型肺炎と確認されないまま亡くなる患者も多いという。医師は「行政当局は高血圧や糖尿病など慢性的な病気があれば死因をそう書く。持病がなければ『急死』の扱いだ」と明かす。

 中国誌「財経」(電子版)は「政府発表の感染者数と死亡数は感染拡大の全貌を反映していない」と伝えた。七百床の大病院でも一日百個の検査キットしか供給されないと報じたが、財経の記事はすぐに削除された。中国当局が窮状を隠蔽(いんぺい)したとみられる。

 

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