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【国際】

年金、海外も財源不足 各国の事情は

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 世界的に平均寿命が延びる中、老後の生活の支えとして重要性が高まる年金。2008年のリーマン・ショック後、多くの国が財源不足に苦しんでおり年金制度の見直しは急務だ。少子高齢化で年金の支え手が減っている日本だけでなく、成長を背景に余裕があった中国やブラジルも改革を進める。各国の年金制度の現状と課題を探った。

◆中国・積立金35年に底

 急速に少子高齢化が進む中国では年金制度は先を見通せない難題となりつつある。生活に直結する年金支給に国民は敏感で、中国共産党と政府は制度の安定化に向け改革を加速させている。枯渇が危ぶまれる財源の確保に向け、年金基金の市場運用を急ぎ、給付年齢の引き上げ案も浮上するが、抵抗は大きそうだ。

 中国の六十歳以上の人口は既に二億五千万人に達し、五〇年ごろ五億人に迫る。政府系シンクタンク、中国社会科学院の報告書によると、年金給付額が年金基金の収入を上回り、積立金は三五年に底を突く見通しだ。

 中国政府は約三年前から年金基金の株式などへの投資運用を始め、財源を補おうとしている。政府は普及が進んでいない企業年金や、個人年金保険も推奨している。

◆ギリシャ・十数回支給額下げ

 手厚い年金が財政危機の要因になったと指摘されるのはギリシャだ。過去の政権が財源を確保しないまま支給を続けたツケが回ったとの見方もあるが、根本的な構造は変わらず同国では制度改革が急がれる。

 政府は〇九年の財政危機発覚後、十数回にわたり年金支給額を削減。ミツォタキス首相はこれ以上の削減はしないと明言するが、国民の不安は大きい。ニコス・ヤソグルーさん(91)は年金の75%をカットされ「四十一年間、年金を受け取るため国に納め続けた金はどこにいったのか」と嘆く。

 人口約千百万人のうち年金受給者は約二百五十万人で、現役労働者約三百五十万人が支える。パンディオン大のハラランボス・エコノム教授(社会学)は「経済を成長させ雇用を創出しない限り年金制度は持続させられない」と分析する。

◆ブラジル・歳出減へ大ナタ

 ブラジルも年金制度が政府の財政圧迫の原因となってきた。これまでは民間企業や公務員の支給開始年齢の定めがなく、男性は三十五年、女性は三十年、保険料を拠出すれば受給を開始できた。

 年金改革は過去二十年以上にわたり歴代政権が試み、失敗してきたが、議会は昨年十月、ついに改革法案を成立させた。今後十年間で八千億レアル(約二十一兆円)規模の歳出削減効果を見込む。支給開始年齢は男性六十五歳、女性六十二歳と定められた。ブラジルの平均寿命は七六・三歳(一八年)で「六十五歳で退職すれば、残りの人生を満喫できるのはたった十一年」とリオデジャネイロのホセ・テオドロ・フランコさん(55)。

 年金制度が豊かな老後を保障する有力な手段となっているのは、オーストラリアの仕組み。公的年金である社会保障年金(老齢年金)に加え、「スーパーアニュエーション」という私的年金が充実しているためだ。

 スーパーアニュエーションは会社員や公務員など被用者が強制加入となり、雇用主は賃金の一定割合(現在は9・5%)を被用者の年金口座に拠出することが義務付けられている。一八年六月末のスーパーアニュエーションの資産残高は二兆九千億豪ドル(約二百十五兆円)と国内総生産(GDP)を超える。

 一方、約十三億の人口を抱えるインドではほとんどの国民が年金に未加入。中央政府や州政府の公務員を対象にした強制加入の年金制度があるものの、民間では一部に任意加入の仕組みがあるだけ。政府は医療制度の拡充に力を入れる一方、年金制度は手つかずで、高齢者の生活は家族の支えに頼っているのが現状だ。

◆日本・国民年金30年後3割目減り

 日本の公的年金制度は「国民皆年金」と言われるのが最大の特徴だ。国内に住む二十歳以上六十歳未満の人は国民年金(基礎年金)に加入する義務があり、老後生活の柱と位置付けられている。現役世代の負担が過重にならないよう保険料に上限が設けられている一方、少子高齢化の中で年金財政を維持するため、給付膨張を抑える仕組みがある。国民年金は約三十年後に三割程度も価値が目減りする見通しだ。

 公的年金は自営業者らが加入する国民年金と、会社員や公務員が入る厚生年金がある。国民年金は保険料を四十年間納めた満額で月約六万五千円、厚生年金は平均的な給与で四十年間働いた夫と専業主婦のモデル世帯で月約二十二万円。国民年金だけの家庭は、ほかの収入や豊かな蓄えがなければ、現状でも生活が厳しい。

 厚生労働省が昨年八月に公表した長期試算では、経済成長する標準的なケースでも将来的に公的年金の価値が目減りすることが鮮明になった。

 「マクロ経済スライド」と呼ばれる給付抑制策があるためだ。日本の年金制度は、現役世代の納める保険料が年金受給者への支払いに充てられる。保険料を支払う現役世代が減少する一方、年金を受け取る高齢者の平均余命は延びている。

 物価や現役世代の賃金が上昇すれば年金額も上げるのが基本だが、これらに合わせて上げ続けると年金財政が立ちゆかなくなる恐れがある。そのため年金額を物価と賃金の伸びよりも低く抑えるルールで、二〇〇四年の制度改革で導入。厚生年金の保険料は計画的に引き上げ、労使折半で18・3%に固定している。

 政府は開会中の通常国会に制度改革の関連法案を提出する。パートなど非正規で働く人たちの厚生年金への加入を促進して将来の年金額を手厚くするほか、支え手を増やすのも目的だ。

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