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【国際】

中国新型肺炎拡大「統制下の人災」 言論の自由求める機運

 【北京=中沢穣】新型コロナウイルスによる肺炎(COVID(コビッド)19)が拡大する中国で、政府の言論統制が感染拡大を招いたとして「言論の自由」を求める声が高まっている。正確な報道や情報発信を認める言論の自由がなければ、生命や生活が脅かされるとの認識が広まったためだ。以前には統制を受けていた調査報道やネット上の発言が注目を集める一方、政府が逆に統制を強める動きもある。

 原因不明の肺炎の流行にいち早く警鐘を鳴らした湖北省武漢市の眼科医、李文亮(りぶんりょう)氏(33)が七日に死去すると、中国の会員制交流サイト(SNS)は李氏の追悼文などで埋め尽くされた。「健全な社会は一つだけの声になるべきではない」。李氏が生前、中国メディア「財新」に語った言葉とともに、共産党が流す一つの価値観しか許されない現状への怒りも語られた。

 李氏の死を受け、八日には北京大の張千帆(ちょうちほ)教授や清華大の許章潤(きょしょうじゅん)教授らが言論の自由を求める公開書簡を公表。書簡は「感染拡大は言論の自由の圧殺が生んだ人災だ」と批判し、武漢市などの当局者に謝罪を求めた。さらに十二日には人権派弁護士らが声明を出し、「言論の自由と知る権利の剥奪は、生命と健康に生きる権利が無視されていることだ」と訴えた。

 一般の市民らもSNSを通じ、武漢市政府などに対する批判や不満を公然と発信している。一部中国メディアも積極的な報道を続けており、財新のほか、新京報や三聯生活週刊などが現地の混乱や惨状を報じた。

 しかしネット上で注目を集めた調査報道などは、早ければ数時間で閲覧が規制されている。中国政府は一定の範囲で自由な報道を黙認しているとみられるが、情報統制も忘れていない。

 北京の弁護士、陳秋実(ちんしゅうじつ)氏は「公民記者」を名乗って武漢に入っていたが、李氏が死去した前後に当局に拘束されたもようだ。陳氏は病院や葬儀場などの現状を伝えていた。患者のあふれる病院の様子をSNSで伝えた武漢市民が一時拘束されたケースもある。人権派弁護士ら政府に批判的な人々のSNSアカウントが削除される動きなどは、逆に強まったとみられる。

 北京の人権活動家、胡佳(こか)氏は本紙取材に「市民が言論の自由の重要性に気づいた。二〇二〇年は将来、『言論の自由元年』と呼ばれるかもしれない」と期待を掛ける。一方で「言論の自由はすなわち政府を批判する権利だ。政府も今回、言論の自由がもたらす影響の大きさを再認識した」と指摘し、将来的にはさらに言論統制が強まる恐れもあると悲観的だ。

 

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