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【国際】

タイ兵士 無差別乱射 軍の闇に広がる批判

バンコクでも13日、追悼集会が開かれ、参加者は「事件は軍にも問題があることを示した」などと訴えた

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 タイ東北部ナコンラチャシマ県の基地に所属する陸軍兵士が今月8〜9日、上官らを殺害したうえに、市民らに無差別に発砲した事件。90人近い死傷者を出し、同国で類を見ない凶悪犯罪となった。上官との金銭トラブルが引き金になったとみられるが、大勢の一般市民が巻き添えになったことで、軍の責任を問う声が上がる。 (バンコク・岩崎健太朗、写真も)

 「爆音のように銃声が響く中、大勢が逃げ惑い、パニック映画のようだった」

 射殺された陸軍所属のジャカパン・トンマ容疑者(31)が十五時間立てこもったショッピングセンターの警備員チラユットさん(22)は、店舗三階で勤務中に異変を察知した。無線を通じ、警備室の防犯カメラ映像などから容疑者の動きを把握。爆弾を所持しているとの情報もあり、十数人を誘導しながら、非常口などに身を潜めた。

 ライフルや機関銃で重武装した容疑者は、にぎわう週末のショッピングセンターで、買い物客らを無差別に銃撃した。取り残された数百人はSNSなどで情報を共有しながら、店舗やトイレ、倉庫などで救助を待った。一階の貴金属店店員ソムポンチャイさん(23)は突然の銃声で外に逃げ出す余裕がなく、店の奥へ身を隠した。五時間後に治安部隊に助け出され、「生きた心地がしなかった」と振り返った。

 死者二十九人、負傷者五十八人という前代未聞の惨事には、これまで公然と語られなかった軍への批判が広がっている。容疑者は市街地で凶行に及ぶ前、上官やその義母らを射殺。住宅購入にあたり、軍の福利厚生部門に関係したローンの手数料名目で上官らの懐に入った計四十五万バーツ(約百六十万円)の支払いを求めていたが、相手にされなかったことへの恨みが背景にあったとされる。軍OB関係者は「こうした特権ビジネスは、厳しい上下関係に乗じた形で軍内部にはびこり、不満を持つ下級兵士は多い」と指摘する。

 容疑者が、所属する軍基地の武器庫から複数のライフルや機関銃、千発近い銃弾などをたやすく持ち出せたことへの不信感も。軍トップのアピラット陸軍司令官は記者会見で「軍を責めずに私を責めてほしい」と涙ながらに訴えた。しかしSNSでは「責任をとらなければ、軍はさらにだめになる」「それは誰のための涙か」などと辞任論が噴出した。ただ、アピラット氏は現政権の実力者で、今後も見据えており、辞任に応じる気配はない。

 同氏の前任であるプラユット首相も事件現場に足を運んだが、治安部隊への激励に笑みをみせ、「犠牲者の前で不謹慎だ」との批判が集中した。

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