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【震災2年特集】

放射能汚染を追う<上> 高線量 なお警戒

 東京電力福島第一原発事故で放出された放射性物質は、首都圏各地にも拡散した。千葉県松戸市や東京都足立区では、公園や学校などでの除染作業に一定の効果が出ている。だが、放射性物質は移動して再び集まる可能性があり、放射線量の継続測定が必要だと指摘する専門家もいる。事故から間もなく二年。本日は放射能汚染の現状と対策、あすは食品汚染を特集する。

●住宅の除染

千葉県松戸市での住宅除染イメージ

 松戸市は原発事故後、学校や公園などでの空間線量測定のほか、農作物や給食、流通食品、飲料水に含まれる放射性物質の検査など、さまざまな対策に追われた。今、重点的に行っているのが民間住宅の除染だ。

 二月十五日時点の申込件数は一万三千二百五十件。うち除染が必要との測定結果が出たのは四千六百六十九件で、千百三十一件の除染を終えた。申し込みのあった住宅での測定を三月末までに終えたいとしている。

 市内の九割が国の定めた汚染状況重点調査地域にあたる。調査地域外でも小学生以下の子どもが住む家は、市の独自施策として申請を受け付けている。市の江部昭夫放射能対策課長は「今後も公園や学校など子どもの関係する場所で定期的に測定を続ける」と話す。

●独自目標値

 茨城県東海村のJCO臨界事故(一九九九年)で住民から不安の声が上がったことを受け、東京都足立区は同年から毎月一回程度、区役所近くで地上一メートルの空間線量を計測してきた。福島第一原発事故前の平均値に比べ、事故直後は数値が四倍に上がったという。

 低レベルの放射線の健康被害について、国から指針が明確に示されない中、区は二〇一一年六月、独自に放射線量の目標値を定めた。

 区の川口弘危機管理室長は「住民の不安の声に応えて対策を取ってきた」と振り返る。現在も局所的に放射性物質が集まるホットスポット対策などを続けている。

●自ら防衛策

 「こういう時代になったんだと放射能の存在を認めた上で、どうやって暮らしていくかを判断していくしかないと思う」。東京都世田谷区で四歳の男児を育てる中山瑞穂さん(42)はそう語る。

 最近、息子が通う保育所に働きかけ、保育所の土壌や給食で出されるコメや麦など食品の放射性物質を測定することが決まった。

 行政ができることには限界があると強調する。「放射能汚染から目を背けず、できる限りの防御をしたい」と話した。

◆平均で20%減少

 図解で示した自動車の走行測定による放射線量の増減は、ヘリコプターによる上空からの測定に比べ、より人々が暮らす環境に近い場所の放射線量の状況を知る上で一つの目安となるデータだ。

 独立行政法人・日本原子力研究開発機構によると、二〇一二年三月と一二年八〜十月の二回の測定結果を比較すると放射線量は平均で二十数%減少。事故から二年たち、放射性セシウムが自然に壊れて減ったり、雨や風などで移動したりしたのが要因とみられる。

 だが、車での測定にも限界がある。側溝などに集まった放射性物質は測定できず、測定時には存在しなかった場所に放射性物質が移動してたまった場合があるからだ。山間部など道路がないところは測定できない。地方自治体が管理する道路は機構が自治体に調査を依頼するが、参加しない自治体もある。

 放射線量が10%以上減少した地点も目立つ。だが、福島県では10%以上増えた地点もある。機構は一二年三月の調査では雪が積もっていて放射性物質が遮蔽(しゃへい)されて測定ができなかったためではないか、と説明している。

 図の緑の地域は、放射線量が明らかに低かった地点で、増減の比較はしていない。

◆風雨で移動 集まり濃縮も 小豆川勝見・東大大学院助教

小豆川勝見・東大大学院助教

 東京電力福島第一原発事故で放出された放射性物質は、同じ場所にとどまらず、風や雨の影響でどんどん移動する。

 これまでは雨どいの下や排水溝で高い数値が出たが、現在はそこからさらに大きな河川に移動している。茨城県守谷市で観測すると、用水路の底の泥から一キログラム当たり七万ベクレルの放射性セシウムが検出された。排水設備が整備された場所ほど、放射性物質が集まって濃縮されることがある。

 除染をしても、放射性物質が再び集まり数値が上がってしまうケースや、逆に風などで放射性物質が運ばれ、拡散して数値が下がる場合もある。今後も測り続けることでしか、その場所の本当の状況は分からない。

 事故から間もなく二年。いまはまだ事故初期の段階で五年、十年先を見据え、放射性物質がどう移動するか予測を立てる時期だ。

 市民が使う簡易計測器では正確な数値は計測できないかもしれないが、傾向を調べることはできる。雨が降った後や風で砂ぼこりがたまった時に数値がどう変化したのか。数値が上がっていれば、行政に連絡して精度の高い測定につなげていくことができる。放射性物質は移動するということに関心を持ち続けてほしい。

 

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