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【彩の国 まつりごと】

【第十部】次への一歩<1> 県議会も5カ年計画

2011年10月26日

県議会定例会の本会議。県の長期計画に議会側が本格的関与を始めたことで、二元代表制は活性化するか=さいたま市で

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 「県議会は普段、知事が作った料理の味付けを変えることしかできない。県議会が食べたい料理を、形にしました」

 県政の“羅針盤”である五カ年計画の向こうを張って、独自の五カ年計画策定に乗り出した県議会。今月十九日、議事堂で中間まとめを発表した野本陽一県議(72)が「食べたい料理」と言ったのは、「知事提案の議案に議決という判を押すだけ」と批判され、存在感が問われる議会が知事側に対案を出し、論議をするという宣言だ。「おそらく全国初の試み」(議会事務局)という。

 主要四会派による「議会あり方研究会」が担当。座長の野本氏は「二元代表制のあるべき姿を示す」と、意義を強調した。

 首長とは別に有権者に選ばれる議員。議会は政策立案もできるが、予算案を作って施策を実行する権限は首長にある。議員からは「議員提案で条例ができても、首長に『予算を付けて』と頭を下げなければならない」との嘆きが漏れる。計三十項目の「重要政策」を示した議会版五カ年計画も、予算化は上田清司知事(63)次第。野本氏は「議会の意思として『知事の目標』を決め、知事に実行してもらいたい」と話す。

 議会側の動きに、県庁は警戒感をあらわにする。ある幹部は「これは知事への挑戦状。県議会はルビコン川を渡ろうとしている」と言った。

 この幹部が問題視するのは、議会版計画が示した計二十八の「指標」。指標には今後数値目標が設けられる予定で、施策の達成度を示す基準になる。

 例えば議会版は「特別養護老人ホーム(特養)待機者数の減少」を指標として示すが、県の現行計画は「特養の入所定員数の増員」。似たような指標だが、意味は異なる。

 県は入所定員を本年度末までに一・五倍増の二万二千五百人とし、整備予算を付けて達成を目指す。だが議会側の「待機者数減少」を指標とすると、特養整備が潜在需要を掘り起こすなどし、いくら整備しても追い付かない可能性もある。

 県幹部は「特養整備だけに予算を使えればいいが、財政は厳しい」と指摘。研究会幹事長の奥ノ木信夫県議(60)は「行政に都合が悪くても、われわれは県民目線で指標を考えた」と反論するが、県側には「知事の予算執行権に議会が手を突っ込んできた。現実を無視した指標もあり、無責任だ」という思いが渦巻く。

 知事は二十六日、新五カ年計画の原案を公表し、県議会十二月定例会に提出する方針。議会版五カ年計画はこの定例会で議決を目指す。ただ、県議会は一枚岩でなく「知事案の修正で十分」「議決の必要はない」などの声も内部にある。

 議会が活動内容を市民に直接説明して意見を聴く「議会報告会」が広まっているが、自治体議会改革フォーラム(東京)による昨年の調査では、都道府県で開いたのは岩手と静岡だけ。埼玉県議会は五カ年計画策定で開く予定はなく、議会の意気込みを有権者にどう伝えるか、課題は残る。

 県議会の挑戦は、二元代表制の新しいモデルになるか。ある県議は「住民目線の計画を作り続ければ、議会と県民の距離は縮まる。“通信簿”をつけるのは県民だ」と言った。 (杉本慶一)

     ◇

 統一地方選の今年、元日紙面から始めたこの企画は今回が最終章。地方議会や行政の改革はどこまで進んだのか。大震災や原発事故を経て踏み出した「次への一歩」の現場を歩いた。

 <県の5カ年計画> 県が5年間で取り組む施策を網羅した基本計画で、知事が原案を作る。現行(2007〜11年度)では計64の施策と、数値目標を設定した計97の指標がある。県は1973年度から5カ年計画を定めてきたが、2004年以降は策定や変更を県議会の議決事項とした。議会版の作成を進める「議会あり方研究会」には自民、民主党・無所属の会、公明、刷新の会の4会派から24人が参加している。

 

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