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【おそろし 謎めき 北関東の怪談・奇譚】

子どもが怖がる天狗様 古峯神社の天狗(栃木県鹿沼市)

「巨大な一本の木をくり抜いて作ったそうです」と説明する大河原さん=栃木県鹿沼市で

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◆うそをついて、納屋が燃やされました

 昔々、古峰(こぶ)ケ原の古峯(ふるみね)神社へ、今の岩手県に住む信者が参拝にきたときのこと。古峰ケ原の神様は山芋が好物だということで、参拝する際には山芋を持参するのが習わしでした。

 しかし、その信者は、山芋のことはすっかり頭から抜け落ちて、持ってくるのを忘れてしまいました。ただ、社務所の人に正直に言うのもばつが悪く、「持って来るために準備はしましたが、納屋の中に置いてきてしまいました」とうそをつきました。

 神社の神様の使いである天狗(てんぐ)は、それを聞いていました。そして、信者の前に現れ、「お前の家に行って納屋を見てくるから」とだけ言って、どこかに消えてしまいました。

 翌朝、再び天狗が現れ、信者にこう伝えました。「お前の家に行ってきたが、夜で暗くてよく見えなかったので、火を付けて明るくした」

 参拝を終え、郷里に着いた信者が納屋を確認してみると、天狗が言っていたとおり、焼けてなくなっていました。聞くところによると、うそをついたその日の夜に、火事になっていたそうです。 (古峯神社の言い伝えより)

     ◇

 「子どもは怖がって近づけないですね。泣いちゃう子もいます」

 天狗(てんぐ)信仰から「天狗の社」として知られる鹿沼市草久の古峯神社。権禰宜(ごんねぎ)の大河原肇さん(46)に本殿内を案内してもらうと、巨大な天狗の面が飾られていた。

 顔が赤くて鼻が長いのが「大天狗」、黒くてくちばしが突き出ているのが「烏(からす)天狗」。四百年以上前に奉納されたもので、ほかにもいたる所に小さな天狗の顔があった。「あくまでも神様の使いですが、不思議な力を持つとされ、神様同様にあがめられています」

 「なぜ天狗なんですか」と素朴な疑問をぶつけてみた。「近くに日光を開山した勝道上人の修行場所があります。ひげが伸び、いかつい顔をした修験者らが天狗に見えたのでは」と大河原さん。

 私の故郷・秋田では、鬼の風貌をした「なまはげ」を山の神の使者として信じる地域がある。海岸に漂着し、住民から逃げるように山で暮らした外国人が鬼のように見えたからという説もあるが、それを思い出した。

 神社前の売店で働く石原誠己さん(28)が「小さいころ、悪さをすると、親から『天狗が来るぞ』と脅かされた」と教えてくれた。子どものしつけに利用するあたりも、なまはげとそっくりだ。 (石井紀代美)

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<メモ> この天狗の話は、古峯神社の関係者が参拝者によく話す言い伝え。神社は東北自動車道鹿沼インターチェンジから車で約50分。古峰ケ原高原の登山口近くに位置し、境内には、地形を生かして造った日本庭園がある。梅、桜、ショウブなど四季折々の花を見ることができ、茶室では抹茶も楽しめる。入園料は大人300円、小人200円。抹茶はお菓子付きで600円。

 

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