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都議選2013

特集・連載

知ってますか? 都会の苦労<3>買い物弱者 

商店街を巡回するコミュニティーバスに乗り込む高齢者=東京都世田谷区祖師谷で

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 「スーパーまで、往復で三十分。夏は大変よ。行って帰ってくると髪の毛まで汗でびっしょり」

 東京都世田谷区の主婦三浦行子さん(76)は、病気がちな夫(82)と二人暮らし。住んでいる宇奈根地区は、多摩川や高速道路に囲まれている。周囲から孤立したようなエリアで、近所に商店は少ない。

 自転車に乗れない三浦さんは、隣の地区のスーパーまで歩く。重い米や水などは生協の宅配が頼りだ。趣味の絵手紙で使うインクは、三十分ごとのコミュニティーバスに乗って、二子玉川の大型商業施設で求める。

 三浦さんのような買い物弱者は、過疎化が進み、商店街が寂れた地方の現象とみなされがち。しかし、日大商学部でゼミの学生と二十三区を調べた秋川卓也講師(物流論)は「都市部にも存在する。宇奈根のように、商圏が切れた地域に多い」と指摘する。

 農林水産省農林水産政策研究所の「食料品アクセスマップ」では、沿岸部や多摩川、荒川、江戸川沿いに、生鮮品販売店舗までの距離が遠い地域が集中する状況が分かる。

 命綱の一つがコミュニティーバスだ。世田谷区内には計七ルートあり、いずれも私鉄系のバス事業者が運行、行政の補助はない。祖師谷商店街を通るバスは、高齢者の利用が多く「買い物バス」の役割を担う。

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 JR山手線の内側にも、買い物弱者は存在する。港区は昨夏から、バブル期の地価高騰により個人商店が消えた虎ノ門で、支援事業を始めた。区の施設で毎月二回、近くの高齢者が注文した商品を取り寄せ販売する。「外出を促し、定期的な見守りができる」。区の担当者は、買い物以外の効果もあると説明する。

 都も動き始めた。昨年度初めて、練馬区のNPO法人が展開する商品取り寄せなどを弱者支援のモデル事業とし、補助する予算を計上した。

 一方で、都議選の候補から、買い物弱者に関して積極的な発言はあまり耳にしない。十四人が立候補した世田谷区で聞くと、現職の一人は「コミュニティーバスの赤字補填(ほてん)を」と述べ、ある新人は「モデル事業が定着するまで、都は支援を継続すべきだ」と語った。

 総務省の二〇一二年十月一日現在の人口推計で、都内の七十五歳以上の割合は初めて一割を超えた。近い将来、買い物弱者はより大きな都市問題となるかもしれない。 (小形佳奈)

◆横浜市は団地内で「あおぞら市」

 買い物弱者対策として先駆的な取り組みが、横浜市栄区の都市再生機構(UR)公田(くでん)町団地の「あおぞら市」。撤退したスーパーの空き店舗前の広場で、二〇〇八年十月から毎週火曜日に開かれている。主催する住民有志のボランティア団体は、高齢居住者の相談窓口や緊急時の安否確認、定期訪問などの役割も担う。

 路線バスが廃止となった地域にコミュニティーバスを走らせ、運行事業者に補助金を出しているのは千葉市。さいたま市には、六十五歳以上の市民が商店街の協賛店で割引を受けられる「シルバーカード」制度があるが、高齢者が外出するきっかけ作りの意味合いが強い。

 

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