東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 文化 > 変わる知の拠点 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【変わる知の拠点】

<第4部>図書館がつなぐ(3) 大学の学部教育と連携

訪れた学生(右)に論文の書き方などを指導する大学院生=いずれも東京都豊島区の立教大池袋図書館で

写真

 館内に一歩足を踏み入れると、熱気が伝わってくる。エントランスから見下ろせる地下一階の書架の間を学生が行き交い、千五百二十の閲覧席はほぼ満席。二百七十台余りのノートパソコンはすべて貸し出され、二階のグループ学習室では学生たちが真顔で討論している。取材日は雨。それで混雑しているのか−。「いえ、夏休み中でもこの状態です」と図書館利用支援課長の小圷(こあくつ)守さんは笑った。

 立教大池袋図書館は池袋キャンパスに点在していた四つの図書館を統合して昨年十一月に全面開館した。地上三階、地下二階。蔵書は約百四万冊。年間三百三十日、午前八時四十五分から午後十時半まで開館している。ふた付きなら飲み物も持ち込み可。パンを買って食べたり、携帯電話を使っていい場所もある。ただし、雑談などの利用は不可。「ここはあくまで学習、教育、研究の場です」

 同キャンパスに在籍するのは七学部約一万五千人だが、開館からわずか十カ月で利用者は百万人を突破した。大学図書館といえば専門書の閲覧や貸し出しが中心で、館内は閑散という時代から何が変わったのか。

グループワークのためにイスなどが設置され、開放的な雰囲気の「ラーニング・スクエア」

写真

 この図書館のような場は、ラーニング・コモンズ(学習のための共有スペース)と呼ばれる。一九九〇年代、米国で図書館内にパソコンなどで情報収集や学習ができる環境を整えたのが始まり。二〇〇〇年代に入ると、これを発展させ、大学図書館を学習支援サービスも提供する場として再構築する試みが進んだ。日本でも同年代後半から、導入する大学が増えている。

 その背景には近年の大学の授業形態の変化がある。学生の自発性を引き出すことが重視されるようになり、授業で課題を与え、グループごとに学習成果を発表させる課題解決型授業が増えた。このため、授業時間外のグループ学習に対応した施設が求められ、資料が手近にある図書館はうってつけだった。

 同大の新図書館は「論文やリポートなど成果が得られてこその図書館。検索から得られた資料の使い方から論文の作成まで、一貫して支援できる場所を目指した」。従来型の知の貯蔵庫ではなく、知の生産地である。

 ソフト面も充実している。資料の収集法を指導する講習会を年百回開催し、論文やリポート執筆を大学院生が指導する「ラーニングアドバイザー」も置く。その一人、文学研究科の栗田卓さん(30)は「課題を前に、どこから手を付けていいのか分からない学生も多い。データベースを使って先行研究を調べるところから始めます」と語る。

 こうしたサービスにより、月ごとの利用者は旧四図書館合計の一・六倍に。一日三時間以上滞在する人も15%に上る。小圷さんは「今後はさらに学部教育との連携を進めていきたい」と話す。

 

この記事を印刷する

PR情報