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【変わる知の拠点】

<番外編>片山善博慶大 教授に聞く 市民の自立助ける図書館

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 図書館に今後、求められる役割とは何か。一年間連載してきた「変わる知の拠点」の締めくくりに、鳥取県知事として先進的な図書館施策を行った片山善博・慶応義塾大教授(62)に聞いた。 (三沢典丈)

 −図書館が「民主主義の知の砦(とりで)」とはどういうことか。

 国民の図書館のイメージは無料貸本屋。だが、それは違う。鳥取県で図書館改革を行った時、私は万人の知的自立をサポートする場所と位置付けた。人生の重大な悩みなどを解決する糸口を与えてくれるのも図書館だからです。市民が自らの権利を守り、他者の権利を尊重し、地域社会や国を支える主体的存在になるのをサポートする拠点の一つが図書館と考えています。

 −知的に自立していない?

 平成の市町村大合併が行われた時、合併すればバラ色との情報が国などから垂れ流されたが、反対の情報はほとんどなかった。実は図書館なら、過去に合併した市町村の状況や海外の事例を調べることができた。当時、政府は人口一万人以下は自治体ではない、みたいな言い方をしたが、欧米では二、三千人の自治体などたくさんある。役所の情報は中立ではないのです。

 −強引に成立させた特定秘密保護法についても同じですね。

 この件ではマスコミも次第に熱心に報じるようになったが、一般には政府の発表をそのまま流す面もある。だとすれば、市民はそれ以外の情報源を持つことも大切だ。そんなルートを提供してくれるのが図書館なのです。

 −今、多くの自治体で図書館の予算は減らされ、指定管理の導入も進んでいる。

 指定管理の真の目的は行政の質的サービスの向上。民間の力を活用して体育、文化施設などを柔軟に運営する狙いだった。ところが、経費の切り詰めに利用し始め、国から職員定数削減を求められると図書館などを指定管理にした。指定管理の図書館スタッフはたいてい給料も安く、ワーキングプア状態です。書籍代を切り詰めるため、東京の専門業者から買うことにしたせいで地元の書店もつぶれた。

 −この負の連鎖から脱却する道はありますか。

 図書館を多様な行政を展開するよりどころとすればよいのです。例えばマイノリティーへの支援。北欧では難民や出稼ぎ労働者を受け入れている国は多いが、図書館で彼らの国の新聞や雑誌を閲覧できるようにし、子どもたちの母国語教育を実施している。他方、彼らが西欧の地域社会に溶け込むよう、料理教室なども図書館で開いている。日本でも、外国人向けの日本語教育や料理教室はあるが、それぞれ別の場所だし、母国とのつながりを保つ方は関心がない。これを自治体の新しい仕事とする。そして縦割りで別々に行っていた既存の施策も図書館を利用する。両親が共働きの子を学校が預かる放課後児童クラブや歯磨き指導、マタニティー教室なども図書館でやる。こうして図書館に集中すれば、予算も効率化できるのではないでしょうか。

 

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