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【北関東の底力】

自転車競技への思い 稲妻のごとく

「宇都宮のイズムが全国に広がりつつある」。情報発信の大切さを語る宇都宮ブリッツェンの広瀬さん=宇都宮市で

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 美しい自然や観光地に恵まれ、東京へのアクセスの良さも折り紙付きの栃木、茨城、群馬の北関東三県。なのに、民間会社の「都道府県魅力度ランキング」では、毎年のように下位組に甘んじており、地元を愛する者としてはひとこと言いたい。全国に誇れる北関東の商品や、魅力的な町おこしに光を当て、底力となっている逸材たちに迫ってみた。もう「地味」だなんて言わせない!

◆宇都宮ブリッツェン GM 広瀬 佳正さん(37)

 宇都宮市をホームタウンにするプロ自転車ロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」の広瀬佳正ゼネラルマネジャー(37)は、別チームに所属していた現役選手時代、欧州人の監督らから「出身はどこか」と聞かれたことがある。

 「栃木って知ってる?」。逆に聞き返すと、その人はこう言ってくれた。

 「一九九〇年に世界選手権で宇都宮に行ったけど、いい街だ」

 栃木県の「自転車熱」の始まりは、二十年以上前にさかのぼる。そのきっかけの一つが、毎年十月に宇都宮市で開かれるジャパンカップ・サイクルロードレースだ。世界中からトップ選手が集まる国際レースで、二十三回目となった二〇一四年大会も、延べ十二万人が宇都宮に集まった。

 広瀬さん自身、地元開催のジャパンカップの迫力に魅せられ、プロを目指した一人だった。作新学院高校(宇都宮市)を卒業後、強豪チームに所属し、欧州ツアーにも参戦。〇九年の創設から宇都宮ブリッツェンに関わり、一二年に引退するまでチームの「顔」として活躍した。

 一四年シーズン、国内最高峰のロードレースツアー「Jプロツアー」で、チームは二年ぶりの総合優勝を成し遂げた。宇都宮が雷の多い「雷都」と呼ばれるのにちなみ、稲妻が輝く様子を表すドイツ語で「ブリッツェン」と付けられたように、その名を自転車界にとどろかせる。でも、決して現状に満足はしない。

 「スポーツのマイナー競技に例えると、自転車界と栃木県は似ていて、内側への発信ばかり強い。競技ルール作りや人材育成など、内側に力を注ぐだけでは一向に広がらない。社会に必要とされるような仕掛けをしないと」

 チームは「地域密着」の方針を掲げており、その活動は競技の普及だけにとどまらない。

 自転車をこぐことの運動効果に着目し、健康作りに結び付けた提案をしてはどうかと考えてみる。高齢者もできるストレッチを選手自身が考え、自転車安全教室で紹介する。「強い」だけでなく、「日本一温かいチームを目指そう」という目標もある。

 野球やサッカーに比べれば、まだまだ知名度の低いスポーツ。裾野を広げるために「ブリッツェンのようなチームをつくりたい」という団体があれば、協力も惜しまない。二〇一五年、発足に向けて力を貸したプロチームが、群馬県で新たに誕生する。

 目標に向かっていく気持ちに、たくさんの人が関わっていく。努力を継続することや、頑張ることで仲間を見つけたり、家族が一つになったりしていく。そんなところに、スポーツの素晴らしさを実感する。

 「『唯一』のもので戦っていく。他にはないコンテンツ。それをたくさんつくっていくこと」

 一台の自転車が、街に大きなサイクルを生み出している。 (後藤慎一)

 <栃木県の自転車熱> 2013年の総務省家計調査で、宇都宮市の1世帯当たりの自転車の購入額は9448円で全国トップ。JR宇都宮駅西口では、スポーツタイプの自転車のレンタルサービスもしている。車道の両端を青色で染めた自転車専用の通行帯もあちこちで見られ、警察庁の統計によると、栃木県の自転車専用通行帯の総延長(13年度末現在)は116.5キロ。2位の神奈川県の37.0キロを大きく引き離す。宇都宮ブリッツェンのほか、県北部の那須町に拠点を置く「那須ブラーゼン」などの活躍も目覚ましい。

 

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