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【北関東の底力】

男女の出会いが日本救う

「宮コン」の参加店が軒を連ねる中心市街地で、街への愛を語る佐々木さん=宇都宮市で

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◆「街コン」の父 佐々木均さん(55)

 週末の宇都宮市内。中心市街地の複数の飲食店に、おしゃれをした若者が次々と吸い込まれていく。乾杯を合図に、相席になった男女の自己紹介が始まる。別れ際、意中の人に連絡先を聞こうと、勇気を振り絞る男性の姿も。「地方の衰退」「恋愛しない若者」という言葉をはねのけるような活気が、夜更けまで続く。

 宇都宮市では、市街地を舞台にした合コン「宮コン」が月一度ほどのペースで行われている。宮コンを考案し、全国的な「街コン」ブームの火付け役となったのは、市内でバーを経営する佐々木均さん(55)。「地方経済と少子化の救世主」としても注目される街コンの構想は二〇〇四年、地方都市で商売をする者の危機感の中で生まれた。

 十代のころから、用がなくても街中をうろつき、なじみの喫茶店で年長者から音楽やファッションの話を聞かせてもらうのが楽しみだった。愛着がある市中心部でバーを営んでいた二〇〇〇年ごろ、商売仲間の閉店が目立つようになった。

 以前は当たり前だった、先輩社員が若手を行きつけのバーに誘うような「酒の付き合い」が衰退していた。週末に街で遊ぶ若者も減り、異性に声をかける若者も見られなくなった。

 自身を省みれば、若いころ、街で知り合った人々から教わった酒やコーヒーの知識が、バーを営む上での大きな糧になっていた。「若者が出会いを求める心理は変わらないはず。街に出て、地域の魅力を再発見してもらいたい」

 考えた末、複数の店に同時に独身の男女を集め、飲食を楽しみながら交流してもらうスタイルを編み出した。〇四年には自分や知人の店を含む四店舗で始めたが、次第に「お店が発掘できるし、出会いが多い」「街が活気づく」と歓迎され、他県からの参加者や、合流を希望する店も増えた。

 イベントの規模が大きくなるにつれ、心を砕いたのは、参加者と店の双方が参加しやすい仕組みづくり。よりたくさんの人と効率よく出会えるように、参加者が対象店を自由に行き来できる形式に。開催の頻度を二カ月に一度から月一度に増やし、店側の安定した収入につながるようにした。

 中高年を主役にした「大人宮コン」や、ゴルフを楽しむ「宮コンゴルフフェスタ」など新企画にも挑戦。宮コンの成功が波及する形で各地に類似イベントが増えたが、初開催の時の人気や規模を長く維持できる所はわずか。多彩な企画を次々と打ち出す宮コンは、今でも千人規模の堅調な参加者数を誇っている。

 一二年には、各地の街コン団体と社団法人「日本街コン協会」も設立。今春、複数の都市での街コンの同時開催を予定する。

 「自分に交際相手がいないと、自分だけもてないんじゃないかと臆病になりがち。まずは、出会いを求めている人が日本中にたくさんいることを知って、一歩を踏み出してほしい」

 交際相手がいると、デートや贈り物でお金を使うもの。結婚や妊娠、出産を経験すると、広い部屋や車なども必要になる。結果、「消費と労働の両方に積極的な人が増える」というのが持論だ。

 「街コンが救うのは地域だけじゃない。日本全体を救うと思っています」(大野暢子)

<宮コン> 宇都宮市中心部の飲食店を舞台に、相席になった異性と交流する催し。同性で偶数人数の参加が原則で、対象店舗を自由に行き来し、食べ放題・飲み放題のサービスを受けられる。これまで延べ約9万人が参加し、年間約50組が結婚する。開催日は、遠方からの参加者で市内の宿泊施設が繁盛するなど、地域経済への影響も大きい。

 

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