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【北関東の底力】

未来へ「きぼう」支える

筑波宇宙センターの展示施設にある、「きぼう」の実物大模型の中に立つ谷垣文章さん=茨城県つくば市で

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◆筑波宇宙センター主任開発員 谷垣文章さん(46)

 宇宙実験は、つくばが支える−。地上約四百キロの宇宙空間を周回する国際宇宙ステーション(ISS)。日本実験棟「きぼう」では、日本人や各国の宇宙飛行士による実験が繰り返されている。地上から支援しているのが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センター(茨城県つくば市)だ。「宇宙実験には本番だけでなく、準備や結果の解析など、いろんな局面がある。それぞれ失敗することなく、成果が出るようにしたい」。スタッフの一人、谷垣文章主任開発員(46)は、緊張が続く任務について語る。

 日本人宇宙飛行士の星出(ほしで)彰彦さん、若田光一さんがISSに長期滞在した二〇一二年から一四年にかけ、メダカやゼブラフィッシュを「きぼう」内の実験装置で飼育、変化を遺伝子レベルで解析する実験が行われた。人間が宇宙空間に長期滞在した際に骨量の減少や筋萎縮が起こる原因、解決法を探るとともに、高齢者らの骨粗しょう症や筋萎縮などの予防・治療法を見いだす応用が期待されている。

 実験は、基本的に地上から実験装置を遠隔操作し、宇宙飛行士は、地球から無人補給機「こうのとり」などで運び込まれた装置の組み立てやトラブルへの対処を担う。宇宙飛行士はISSの維持管理、自身の体調管理のためのトレーニング、地上との交信イベントといった業務があり、五分刻みでスケジュール管理されているほど忙しいという。

 谷垣さんは「日本の実験が予定時間内に終了しないと、宇宙飛行士の次の日程に影響する。決められた時間で実験を終わらせたり、米航空宇宙局(NASA)と宇宙飛行士の行動予定の時間調整をしたりするのが、地上の技の見せどころ」と説明する。

 子どものころ、アニメの「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」を見て、谷垣さんは宇宙に関心を持った。いまでは、「ISSを身近に感じてほしい」と、小中学生や大人向けの講演にも力を入れている。

 よく紹介するお気に入りの詩がある。スペースシャトルに搭乗したサウジアラビアの宇宙飛行士が作者という。

 <最初の一日か二日は、みんなが自分の国を指していた。三日目、四日目は、それぞれ自分の大陸を指した。五日目には、私たちの念頭にはたった一つの地球しかなかった>

 谷垣さんは、この詩を引き合いに語る。「自分たちの国の利益を考えたり、国境を争ったりするのではなく、地球を一つの社会として客観的に見る意識を持つことができるのが、宇宙開発の一つの長所ではないでしょうか」(松尾博史)

 =おわり

<国際宇宙ステーション(ISS)> 日本、米国、カナダ、欧州各国、ロシアの計15カ国が協力し、運営管理している施設。1998年に宇宙での建設が始まり、2011年に完成した。大きさは約109×73メートル。宇宙飛行士6人が滞在し、地球の周りを約90分で一周している。日本実験棟「きぼう」は、筑波宇宙センターにある運用管制室が24時間体制で監視・運用を担当している。

<たにがき・ふみあき> 兵庫県豊岡市出身。京都大農学部、同大学院を経て、宇宙航空研究開発機構の前身である宇宙開発事業団に入った。科学技術庁(現文部科学省)への出向や米航空宇宙局で研修を受けた計3年間を除き、筑波宇宙センターで勤務している。

 

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