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【Vの時代 ボランティアが築く未来】

(2)若者 大人が敷いたレールの先に

全校生徒が「ボランティア部」。笑顔で写真撮影に応えた=宮城県栗原市の県立築館高校で

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◆踏み出した一歩 「無力じゃない」

 昨年十二月中旬、宮城県北部、栗原市に雪が舞った。積雪約一〇センチ。「まだ少ない方です。昨冬は雪かきで腰が痛くなった」。市内にある県立築館(つきだて)高校の三浦孝洋校長が苦笑する。

 築高には「部員数日本一」をうたうボランティア部がある。四百六十六人、全校生徒が部員だ。「地域の方々に評価され、子どもたちに自己肯定感を高めてもらいたい」と思いを語る。

 創部六年目。地元の依頼を校内に掲示し、興味を持つ生徒が参加する。祭りの手伝い、小学生の算数教室…。本年度は二十九件の依頼があり、延べ四百二十四人が活動した。

 昨冬は雪かきの依頼もあった。山間部の独り暮らしの高齢者宅。一メートル超もある雪を、生徒九人が大人と片付けた。お礼にと、婦人会が用意してくれたカレーライスがおいしかった。

 「この冬に機会があったら参加したいな」と一年の鵜沢飛羽(とわ)君(16)。小学二年で東日本大震災を経験している。幸い家族は無事だったが、石巻市の自宅は津波で丸ごと流された。

 避難したショッピングセンターで配られた食料のありがたみ。今も身を寄せる祖父母の家の温かさ。「僕も人のために、と思うようになりました」

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 全国の教育現場に、ボランティア活動の窓口が生まれている。小中高の受験情報のバレクセル社(東京都)によると、高校のボランティア部は首都圏に百五十五。若者を支援するNPO法人「ユースビジョン」(京都府)によると、大学ボランティアセンターは全国に百七十ある。

 きっかけは、多くの若者が支援に駆け付けた一九九五年の阪神大震災だ。そして七年後、国の中央教育審議会が「奉仕活動」の重視を打ち出す。諮問したのは「教育改革」を掲げた森喜朗内閣だった。

 中教審は、若者の思いやりの心や社会性の欠如を指摘し、奉仕活動を通じた人格形成を提言。入試や就職活動でのボランティア歴の重視、ボランティア活動の単位認定も促した。

 ただ、こうした「大人が敷いたレール」に、ユースビジョン代表の赤沢清孝さん(44)は「参加のハードルは下がったが、自主性を損なう一面がないか」と懸念する。

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西日本豪雨の流木を片付ける岡本凌翼さん(右)=岡山県総社市で(青山学院大学提供)

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 二百二十人超が亡くなった昨夏の西日本豪雨。約二カ月後、青山学院大学(東京都)のボランティアセンターが募った十六人が岡山県へ入った。一年の岡本凌翼(りょうすけ)さん(19)にとっては初の被災地支援。三泊の宿泊費は全額、交通費は片道が無料で、確かに参加しやすかった。

 被害は想像を超えていた。大量の流木。二階まで泥の跡が残る民家。汚れた壁を必死ではがす岡本さんに、高齢の夫婦が「申し訳ない」「ありがとう」と繰り返した。でも作業は一日かけても終わらない。心細そうな夫婦に掛ける言葉もなかった。

 帰宅後、「やり切った気がしない」とモヤモヤしていた岡本さん。「これで終わらせてはいけないんじゃない?」という母の言葉が心に響いた。

 「何かできることがあるはずだ」。思い切ってボランティアセンターの学生スタッフに加入し、年末には熊本地震の復興支援にも赴いた。

 かつて、テレビでニュースを見て「大変だ」と言っていただけの自分。しかし、今は違う。一歩目を踏み出した感覚がある。「微力だが、無力ではない」という実感がある。

 

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