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【第92回全国高校野球選手権大会(2010)・栃木】

<熱球譜>痛み押し 意地の15球 文星芸大付3年中山 匠投手

2010年7月15日

けがに泣かされた文星芸大付のエース中山投手=県営球場で

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 最終打者が打ち取られるのを見届けると、フッと息をついた。初戦敗退−。だが、エースの目に涙はなかった。わずか1イニング15球で幕を閉じた最後の夏。終わった瞬間、ただ「何も考えられなかった」。

 186センチの長身から角度のあるボールをコーナーに投げ分ける。一年時から強豪のマウンドを守り大器と騒がれたが、故障に泣いた。昨春痛めた右ひじは治ったものの、先月の投球練習中、腰に走った痛みは徐々に強さを増していった。

 相手は強敵・宇都宮工。先発は回避し、序盤に救援を打診されても断った。「投げたい、でも…。こんな状態じゃ、迷惑をかける」。チームの勝利を優先した。

 八回の満塁のピンチでも後輩の奮闘を願うのみ。そして、決定的な3点を奪われた。星野英雄監督が「最後は投げてほしい」と送り出した最終回、ついにマウンドに立った。腰の痛みも忘れる全力投球。三者凡退に抑えると「次の回も投げるつもり」で投球練習を続けた。

 「いつかは行ける。絶対行く。行かないといけない」とまで思った甲子園は遠かった。それでも「人間的に成長できた」という三年間。ほろ苦い思い出も糧にできる強さを、背番号1は身に付けたはずだ。 (清水祐樹)

 

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