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【第94回全国高校野球選手権大会(2012)・栃木】

<熱球譜>ピンチの時こそ、強気の勝負 宇都宮北3年 鈴木健朗 投手

ピンチにも動じず、強気で投げ込んだ鈴木投手

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 背後のスコアボードに「0」が並ぶ。投手戦となった準決勝。走者を背負っても、チームの大黒柱は動じなかった。「ピンチの時こそ強気だ」。呪文のようにつぶやいてきた言葉を思い出した。

 中学時代は2番手投手だった。マウンドで苦境に立たされると、腕を大きく振れなくなる。ピンチに打たれることは高校入学後も続いた。昨夏、新チーム始動直後の練習試合でも打たれ、ふがいなさを感じた。

 弱い自分に打ち勝つ体力を身に付けるため、とにかく走った。80メートルダッシュを何本も繰り返す走り込み。1時間近く続け、みんなのペースが落ちてきた時は「ぶっ倒れるまでやってやる」と言いながら走った。黙々と取り組む背中で、仲間を鼓舞した。

 この日は初回からテンポよく投げ、アウトを重ねた。しかし五回から脚の踏ん張りがきかなくなり、球が浮き始める。六回には四球で走者を出すと、盗塁を許した。そんなとき、帽子に書いた、ある文字が頭に浮かんだ。

 六回1死二塁。ファウルなどで追い込んだ後の9球目。宇都宮工の3番打者を内角直球で、見逃し三振に取った。ピンチで投じた、この日一番の球。その後連打を浴び、勝負を決める2点を奪われた。

 試合が終わり、頭の中が真っ白になった。むせび泣きする仲間の姿を見て、初めて負けたことを実感した。つばの裏に太く「強気」と書いた帽子を脱ぎ、自分も泣いた。 (石井紀代美)

 

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