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【第98回全国高校野球選手権大会(2016)・西東京】

<熱球譜>強打のチームで磨いた職人技  日大三3年・中川大輔選手

日大三−東海大菅生 8回表日大三1死一塁、投ゴロで一塁へ向かいダッシュする中川選手

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 つなぎに徹する男にとって、死球は安打と同じくらいの価値があった。2点を返してなおも無死一塁で迎えた六回の第3打席。じんじんと痛む右手首をさすりながら、心の中では「よっしゃー」と叫んでいた。

 二〇一一年の甲子園で優勝した先輩たちの姿にあこがれた。だが、いざ名門校の門をたたいてみるとレベルの高さに圧倒された。「やっていけるかな」。不安がぬぐえない夜もあった。

 打撃は水物だ。強打が自慢の日大三でも、全員が打てるとは限らない。長打を期待される主軸の陰に、俊足で小技が使える地味な職人がいたっていい。そこに、生きる術(すべ)を見いだした。

 50メートル5秒9の俊足は名将小倉全由監督の目に留まり「出塁してかきまわせるようになれ」と励まされた。盗塁のスタートや進塁打を特訓し、送りバントは「百パーセント決められる」と胸を張れるまで自信をつけた。

 努力は実り、春からはレギュラーに定着。あの先輩たちと同じユニホームを着てプレーできる喜びは格別だった。「チームに迷惑をかけないようにやりたい」と最後の夏にかけた。

 今大会、何度もバントのサインが出され、5回戦では無死一塁の場面で一塁側に難なく転がした。観客席から「うまいなあ」と感嘆の声が漏れ、当たり前のようにベンチに戻る背中には大きな拍手が送られた。

 「思い通りの大会にはできなかった」。この悔しさを糧に、大学でさらに職人技に磨きをかけるつもりだ。派手さはなくとも、きらりと光るワンプレーはこの夏、多くの人を魅了した。 (加藤健太)

 

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