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【社会】

ノーベル賞吉野さん 学生時代は考古学に熱中 今へとつながる「事実」発掘の姿勢

 「専門の石油化学が当時の最先端の領域だから、一番古い考古学を選んだ」。リチウムイオン電池の研究でノーベル化学賞受賞が決まった吉野彰さん(71)は、京都大工学部の学生時代に考古学研究会で遺跡発掘に熱中した「考古学者」の顔を持つ。こつこつと物的証拠を掘り進める姿勢が、リチウムイオン電池の開発にもつながった。(豊田直也、芦原千晶、横井武昭)

◆できるだけ自分の専門から遠いことを

 吉野さんは入会の動機を「教養課程の二年間は、できるだけ自分の専門から遠いことをやろうと思った」と振り返る。京都女子大考古学研究会に所属していた妻久美子さん(71)とも、考古研同士の交流で出会った。

 当時、関西各地で発掘し、大学二年時には考古研の会長も務めた。会誌では「発掘で何か新しい事実が明らかになる。発掘に携わる者にとって、それはこの上もなく、うれしいものだ」と魅力をしたためていた。

◆開発の危機から遺跡守った

 一方、高度経済成長期の真っただ中で、道路や住宅などの開発の危機にさらされる遺跡の保存運動にも取り組んだ。白鳳時代に建立された京都市西京区の古代寺院跡「樫原廃寺」が住宅開発の予定地となった際には、他の学生らと署名を集め、国や市などに保存の要望書を提出した。

 運動の成果もあって開発予定は変更され、樫原廃寺跡は後に国の史跡に指定された。吉野さんは二〇一四年ごろ、学会で京都に来た際にこの史跡に立ち寄り「ちゃんと残っていて大したもんだ」と感慨にふけったという。

◆過去・現在から未来が見えてくる

 当時の経験は現在の研究にもつながっている。「考古学は文字や文書がない時代の学問なので、物的証拠がすべて。物的証拠を見て仮説を立て、それが正しいか実証しようという繰り返し。断片的に少しずつ分かってきて、そこから次の発掘計画を立てる。これって、実験と全く一緒なんです」

 受賞が決まった九日夜の記者会見でも「歴史は単なる記憶の学問ではない。過去から現代に至る流れを読み取ることで、未来が見えてくる。研究開発においても面白いツールになる」と力説。栄誉を手にした理由の自己分析を問われ「関係ない分野も含め、できるだけ広い視野と関心を持つことが大事」と答えた。

 学生時代から半世紀。考古研で一年後輩だった兵庫県立考古博物館館長の和田晴吾さん(71)は、受賞決定を伝えるテレビの映像を見て「周りに気配りができるまじめな好青年だった。チームワークよくまじめにこつこつ頑張ったんだろうと思う。うれしくて、こっちまで誇らしい」と笑った。

(東京新聞)

樫原廃寺の発掘現場で映る19歳の吉野さん=前列左から3人目、本人提供

樫原廃寺の発掘現場で映る19歳の吉野さん=前列左から3人目、本人提供
 

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