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【社会】

英語民間試験見送り 格差放置 急転

 萩生田光一文部科学相は一日の閣議後記者会見で、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入について「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べ、二〇二〇年度は見送ると発表した。経済格差や地域格差を広げるなどの批判に対し、十分な対応策が間に合わないと判断したことが主な理由とした。

 今後は、民間試験の活用中止も選択肢に含め、関係者を集めた検討会議を立ち上げ、一年間かけて抜本的な見直しを議論。もともと対象だった現在の高二は民間試験を課されず、中一が受験生となる二四年度をめどに新制度導入を検討する。

 大学入学共通テストは二〇年一月の実施が最後となる大学入試センター試験の後継で、英語への民間試験の導入は目玉の一つだった。見直しが行われるまでの間、共通テストの英語は従来のセンター試験と同様、大学入試センターが作成する試験問題のみで実施する。

 民間試験は、経済格差や地域格差を広げるとの懸念から、高校現場や野党に加え、自民党内からも延期論が噴出。萩生田氏がテレビ番組で「身の丈に合わせて頑張って」とした発言への批判も収まらなかったが、萩生田氏は「判断に影響していない」と述べた。

 見直しの理由としては、格差の問題を挙げたほか、試験実施を民間団体に委ねたことで文科省が間接的にしか関われず対応が遅れたとし、構造的な問題があったとの考えも示した。

 大学入試センターは受験に必要な「共通ID」の申し込み受け付けを一日午前から開始予定だったが、中止した。既に各地の高校から到着していた申請書類は今後、順次返送する。

 民間試験は大学入試センターと協定書を締結した六団体の七種類で、受験生は二〇年四〜十二月に最大二回受験。各大学は成績を出願資格にしたり、大学独自の試験に加点したりする仕組みだった。

 全国高等学校長協会などは、へき地や離島で暮らしていたり、家計が苦しかったりする受験生への救済策が乏しいなどとして、導入延期を求めていた。萩生田氏の「身の丈」発言もあり、批判が拡大した。

 野党は混乱を招いた萩生田氏への辞任要求を強めており、不信任決議案の提出を示唆する声が出ている。

 共通テストでは、国語と数学の一部で記述式問題も導入予定で、採点の公平性などの問題点が指摘されている。萩生田氏は「懸念は実施までに責任を持って解決したい」と述べ、予定通り実施する意向を示した。

◆白紙撤回し再考を

<解説> 公平・公正性が最も求められる入試を民間に丸投げし、格差拡大など数々の指摘に耳を貸さなかった結果、システムが動きだすその日に延期を決める事態となった。誰が、どんな議論をして英語の民間検定試験の導入が決まり、延期に至ったのか、プロセスを検証し国民に説明する責任が文部科学省にはある。

 民間検定試験の導入は、高校と大学の教育をなめらかにつなぐ「高大接続改革」の一環に位置付けられてきた。しかし、高大接続を話し合うため同省が設置した専門家会議では主要な話題になっていない。民間試験利用のアイデアは、グローバル人材の育成を求める自民党教育再生実行本部や経済同友会の提言にルーツが見られ、文科省が固執した背景に政治のにおいを感じる学校関係者も多い。

 「身の丈に合わせて頑張って」と発言した萩生田光一文科相を、菅義偉官房長官は「適材適所」とかばった。格差を是認するような発言をする人物がその職に本当にふさわしいと判断するなら、政権の姿勢も問われる。

 延期した英語試験について文科省は、一年かけて見直すと表明した。「延期」ではなく白紙撤回して考え直すべきだ。その作業が形だけに終わり、子どもたちに再び深い失望を与えることは、絶対にあってはならない。 (柏崎智子)

<英語民間検定試験> 大学入試センター試験の後継として、2020年度に始まる大学入学共通テストの英語で、「読む・聞く・書く・話す」の4技能を問うため、英検やGTECなど6団体7種類の試験を活用する予定だった。計画では20年4〜12月の間に、最大2回受験。大学入試センターが発行する「共通ID」で成績を管理し、大学側に提供する仕組みだった。試験会場は都市部中心となり、高額な受験料の試験もあるため、地域格差や経済格差への対応が不十分として、全国高等学校長協会は導入延期を要請していた。

(東京新聞)

 

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