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【経済】

保育士大量退職、全容見えず 網羅的調査・親へ情報提供ほぼなし

 保育士が大量退職する例が相次いでいる。本紙が都の23区の区役所にアンケートしたところ、2019年3月末の年度替わり前後に5人以上が辞めた例が少なくとも17園に上り、保育士全体の3割以上が辞めた園は合計10カ所、半数以上が辞めた園も4カ所に上った。だが、ほとんどの区が退職状況を網羅的に調べておらず、親への情報提供もしていない。専門家や保護者団体は実態把握と情報公開を求めている。 (渥美龍太)

 アンケートは全二十三区に電話とメールで実施。五人以上の保育士が相前後して辞めた例を聞いた。

 文京区では十人中の八人が辞めた園があり、別の園では十二人中八人が辞めていた。北区でも十二人中八人が辞め、杉並区でも十二人中七人が辞めていた。

 背景にあるとみられるのが待遇の悪さだ。内閣府の調べでは保育士の年収は正規職員でも平均三百六十万円。全産業の正社員の平均値・五百万円に比べると三割低い。長年勤めてもほとんど上がらない給与体系が多く、一カ所で働き続けるメリットが乏しい。年度末に大量退職するのは「不満があっても年度末までは勤め、転職や別の園に移る人が多い」(文京区役所の担当者)ためとみられる。

 いずれの園も新規募集などで穴埋めし、配置基準はクリアしている。

 だが、保育士が大量に入れ替わることによる子供の安全や教育への悪影響を指摘する専門家は多い。保育に詳しいジャーナリストの小林美希氏は「頻繁な保育士の入れ替わりでチームワークが取れなくなれば、全体に目が行き届かなくなり、子供の危険性が増す」と指摘。和歌山大教育学部の米沢好史教授は「保育士が子供との絆を育みにくくなり、子供の発達への影響も出てくる」と言う。

 だが、退職状況の情報公開は進んでいない。

 大量退職に関する親からの不安の声は保護者団体「保育園を考える親の会」(東京)にも多く寄せられている。同会は「保育士の退職状況は保育園を選ぶ際の重要情報」として保育園ごとの退職数を公表するよう政府に長年求めているが、実現していない。

 実態把握自体も不十分だ。今回のアンケートでもほとんどの区が保育園の退職状況を網羅的に調べていないとしており、把握していた例は保護者から通報があった場合などに限られていた。世田谷区は例外的に園ごとに調べホームページで公表しており、その結果として大量退職した園の数が膨らんだとみられる。

 十月からの消費税増税に伴う保育の無償化で子供を保育所に預ける親が増える可能性があり、今後、労働負担の増加から退職や入れ替わりが加速する可能性がある。米沢教授は「自治体や国が責任を持って情報公開を進めるべきだ」と主張する。

(東京新聞)

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