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【社会】

原発事故 手話で伝える 「福島第一」機に考案

 東京電力福島第一原発事故の際、聴覚障害者は事態を把握するのが難しかった。原子力に関する言葉は日常であまり使われず、対応する手話がなかったり、普及していなかったりしたためだ。事故をきっかけに新しい手話が考えられ、原発事故を含む災害対応マニュアルを作る動きが広がるなど聴覚障害者を支援する動きが進む。

 ▽即興

 握った手を開きながら下から勢いよく上げて「爆発事故」、上から手をひらひらと下げて「(放射性物質が)飛び散る様子」を表し、最後に手の指を曲げて胸をたたく「危ない」の手話をつける。福島県聴覚障害者協会の事務局長の小林靖さんが当時、会員らに状況を伝えた手話表現だ。「危ない」以外は状況を描写するため考えた即興。放射線を表すのに「目に見えない」の手話を交えたり顔をゆがめたり、表現を工夫した。「伝える手話があれば」と、もどかしく感じたという。

 東日本大震災と原発事故では、状況を理解できないまま避難した聴覚障害者が多くいた。テレビ画面の字幕は読むのが苦手な人もいる。アナウンサーが語気を強めても、表示される文字の大きさは変わらない。表情や身ぶりで切迫した危険を伝える手話が分かりやすいという。ただ、全ての言葉に対応する手話があるわけではない。

 発生二週間後、日本手話研究所(京都市)は、震災や事故の状況を伝えるための全国共通の手話(標準手話)を載せた冊子を発行した。ニュースから言葉を選び「屋内退避」「放射性物質」などを新たに考案。既存の語を含め地震、医療などの分野ごとに整理した。

 ▽安心感

 この冊子はその後、九州電力玄海原発が稼働する佐賀県で手話通訳の団体などに配られた。

 四国電力伊方(いかた)原発が稼働する愛媛県では、聴覚障害者協会が昨年の西日本豪雨を受け災害時のマニュアルを検討し、原子力を含めた災害関連の手話を載せる案がある。「標準手話は地元では分かりにくい。県民に通用する表現を考える必要がある」と、独自の手話を模索している。

 普段使わない手話は忘れがちだが、福島県協会の会長で自身も障害者の吉田正勝さんは「もし原子力事故が起きたら、資料を見て『この動きだな』と確認できる。使う手話が決まっている安心感がある」と言う。

 日本手話研究所は年に三、四回程度、直近の出来事などから単語を選び手話を増やしている。福島事故後も「脱原発」「再稼働」などを新たに作った。概念を的確に示しているかどうかや、動作が簡単かどうかが重要だ。

 全国手話研修センター(京都市)の小出新一常務理事は「世の中で起きていることに関心があるのは耳が聞こえても聞こえなくても同じ。理解する手助けが必要だ」と訴える。

(東京新聞)

「被ばく」を表す場合 左手の拳で「核」を示し(左)、その下で右手の拳を体に向けて勢いよく開く

「被ばく」を表す場合 左手の拳で「核」を示し(左)、その下で右手の拳を体に向けて勢いよく開く
 

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