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茨城ニュース

いばらきの現場 衆院・県議ダブル選(1) 人口減 人口増

夏至の日の伝統行事「中田植」。地域の人口減による担い手不足を心配する声もある(大子町提供)

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 「このあたりの住民は高齢者が多い。後継者が出ていき、空き家も目立つ。昔に比べて列車の乗客も少なく、ガタンゴトンという音が寂しく聞こえるね」

 水戸までJR水郡線で一時間半ほど。紅葉が美しい山あいの地、福島県境にほど近い大子町下野宮地区で、自営業菊池淳三さん(78)が、過疎化が進む現状を嘆いた。地域の小学校は児童が減って四年前に廃校になり、町中心部の学校に統合された。

 地元の近津(ちかつ)神社では毎年、夏至の日に、豊作を願う伝統の祭り「中田植(ちゅうだうえ)」がある。祭りで田植えをする「早乙女」は、以前は若い女性が務めた。最近ではなり手が限られ、中高年も含めた幅広い年代が田んぼに入る。菊池さんは「地域住民だけで続けていくのは、無理かもしれない」と不安を口にする。

 有識者らでつくる「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)は今年、若年女性の減少率が高く、二〇四〇年の人口(推計)が一万人未満の五百二十三の自治体を「消滅の可能性が高い」とする試算を発表。県内では、高齢化率(六十五歳以上の割合)が約四割と最高の大子町をはじめ、河内町、五霞町の三町が該当するとされた。

 大子町役場も、手をこまねいていた訳ではない。子育て世代の定住促進策として、公営住宅の家賃補助などに取り組んできた。担当者は「一番大事なのは働く場の確保や企業の誘致。『働く場があれば帰郷したい』との声も聞く」と話す。

 政権は「地方創生」を掲げて関連法案を成立させ、県はこの四月、県北振興室を課に昇格して過疎対策を強化した。十二月の衆院選、県議選では、具体的な地域活性化のプランが問われることになりそうだ。

 大子町の担当者は、危機感を募らせる。「県央や県南地域は東京に近く、高速道や鉄道の整備も進んでおり、企業は進出しやすいだろう。山間部や労働力が少ない場所もある県北地域は、取り残されている」

 一方で、人口流入が急激に進む県南地域の自治体も課題を抱える。

 二〇〇五年に開業したつくばエクスプレス(TX)の「みらい平駅」(つくばみらい市)周辺では、東京・秋葉原駅まで約四十分という利便性から、住宅建設や子育て世代の転入が相次いでいる。

 市によると、みらい平地区の人口は、〇六年春に約七百人だったのが、現在は約九千九百人。八年で十四倍に膨れ上がった。この一年間でも千四百人増えている。地区内に来春開校する小学校だけで児童増に対応できず、つくばみらい市は、さらに一校新設する準備をしている。

 人口増で、市は住民税や固定資産税の税収増を見込むが、学校や道路など社会基盤の整備を進めなければならず、「出て行くお金のほうが多い」と片庭正雄市長。「県は人口が増加している地域のことを考えてほしい」と、財政支援などの必要性を訴えている。 (松尾博史)

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 史上初となる衆院、県議のダブル選挙が迫っている。争点となりそうな課題を追って、県内の現場を記者が歩いた。