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茨城ニュース

いばらきの現場 衆院・県議ダブル選(2) 耕作放棄地

整備以前のつくば市内の耕作放棄地(県提供)

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 「日当たりも水はけも良く、畑として素晴らしい場所」。今月中旬、つくば市内の台地に広がる三ヘクタールの農地を見渡しながら、ギンナン加工業で農家の塚田亀雄さん(57)が笑顔を見せた。この他に五カ所、計二ヘクタールの畑でもギンナンを栽培しているが、「一カ所でこれだけ広い土地を借りられる機会はない」。

 この三ヘクタールの畑は、県が昨年からモデル事業として始めた耕作放棄地再生の現場の一つだ。耕作放棄地と耕地が入り交じる土地だったが、県の仲介で今年二月、地権者三十人からまとめて借りた。国などの補助金も活用して荒れ地を耕し、除草し、イチョウの台木二百五十本を植えた。今は接ぎ木の定着を見守っており、早ければ五〜七年後に実を付け、加工して出荷できる見通しだ。

 ただ、こうした再生例はまだ一般的でなく、増え続ける耕作放棄地の解消は全国的な課題。農林水産省の調査によると、二〇一〇年の県内の耕作放棄地率は14・6%。都道府県別で二十四位だが、広さだと全国二位の二万一千ヘクタールにも及ぶ。県農業経営課は「増加のペースは落ちたが止まっていない。農地を守らないと、都道府県別で二位という県の農業産出額も維持できない」と危ぶむ。

 ひとたび耕作放棄地ができると、その農地に樹木が生えて荒れるだけでなく、病害虫や鳥獣の被害、不法投棄、火災などの危険性が高まり、周辺の農地まで荒らしてしまう。高齢化や後継者不足で、農業人口が減ったのが原因の一つ。地権者が遠方に転居し、対策を施せなくなることもある。土地に傾斜があったり、機械が入らないほど狭い場所だったりと、生産性の低さから作付けをやめ、耕作放棄地化するケースも多い。

 別の農家や農業法人に貸せばよさそうだが、耕作放棄地になるほど条件の悪い農地は借り手が付きにくい。また、個々の畑の条件が悪くても、塚田さんが借りたギンナン畑のように集約すれば使いやすいが、簡単ではない。多数の農家と交渉する必要があるためだ。

 「先祖伝来の土地を見知らぬ人に貸したくない」「一度貸すと、返してもらえないのでは」「宅地として売りたい」…。農家には不安や別の期待があり、進んで貸す人が少ない。「農家も総論は賛成だが各論になると別。気持ちの問題は大きい」と県農業経営課。つくば市のギンナン畑も「県と市で地権者に何度もお願いし、一年がかりで同意を得た」と話す。

 それでも「県や市が付いている安心感があったからこそ、一年がかりでも、地権者は同意してくれた」と塚田さんは実感する。自身も以前、別の農地を飛び込みで借りようとしたが、旧知の間柄でないことを理由に断られた。「国や地方自治体の後ろ盾があれば、貸す側も、借りる側も安心できる。やる気のある人が借りやすくなれば、農業はもっと盛り上がる」と、政策の後押しに期待を寄せる。 (妹尾聡太)

 <耕作放棄地> 農水省の統計で「以前耕地だったが、過去1年以上作物を栽培せず、この数年の間に再び耕作する考えのない土地」と定義される農地。1995年は全国に24万4000ヘクタール(茨城県は1万ヘクタール)だったが、2010年には埼玉県の面積とほぼ同じ39万6000ヘクタール(同2万1000ヘクタール)に増加。県内の県北地域の耕作放棄地率は31.4%で、他の地域より突出して高い。