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茨城ニュース

いばらきの現場 衆院・県議ダブル選(3) 津波被災の日立市

震災被害を乗り越え、道の駅としてリニューアルオープンした「日立おさかなセンター」=日立市みなと町で

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 「取れたて、新鮮な魚だよ。お安くしているよー」。衆院選公示直前の日曜日の昼下がり。日立市みなと町の国道245号沿いの「日立おさかなセンター」では、買い物客を呼び込む売り子の声が響いていた。

 センターは、一九九二年八月、農林水産省の地域水産業活性化モデル施設としてオープン。二〇一一年の東日本大震災では津波による浸水と地盤沈下の被害に見舞われたが、改修工事を急ピッチで行い、四十日余りで営業再開にこぎ着けた。今年四月には県内十一カ所目の「道の駅」に登録され、九月下旬にリニューアルオープンした。

 駐車場を拡張、売り場も改装し、立ち寄る人の数は格段に増えた。「だけど、魚を買いに来る人は減ったなと感じるね。震災前の売り上げにはまだ戻らないから。やっぱり放射能の風評被害がね…」。近くの久慈漁港の漁業者で、水揚げしたての魚をセンター内で直販する「住吉丸漁業」の店主今橋正悟さん(56)は寂しげな表情を見せた。

 東京電力福島第一原発事故による風評被害は、今も県内の漁業に影を落とす。県漁政課が二月に関東一都四県の二千人を対象にネットで行ったアンケート「茨城県産水産物に対する意識調査」によると「今も購入を控えている」という人は全体の10・8%。その理由としては「何となく不安だから」「国が設定した放射性物質の基準値が信用できないから」などが挙がった。

 「福島の漁師友達はいまだに操業もできない。福島に近い茨城産が避けられるのも仕方がないのかな」と今橋さん。センターで買い物をしていた地元の主婦(28)は「検査をして安全なものが売られていると分かっていても、小さな子どもに魚を食べさせるのは不安」と本音を漏らした。

 三十代の漁師は「福島の原発の汚染水問題があるうちは、誰も安心できないよ」とばっさり。「アベノミクスとか言っても、この辺りは不景気のまま。日立市の人口は減る一方だし、景気回復の実感なんか全然ない。そんなことより原発事故の後始末をもっと早く進めてほしい」と訴えた。

 センター入り口に設置されたテレビでは、日立市を選挙区に含む衆院選茨城5区の立候補予定者公開討論会の様子が映し出されていた。足を止めて見入る人はいなかった。 (成田陽子)