昆虫愛 四刀流「奏でる 教える 食す 描く」 ベースニンジャ・今沢カゲロウさん

2022年6月6日 07時08分
 昆虫をこよなく愛する国際的ベーシストがいる。鳴き声を取り込んで演奏し、自作の昆虫画展を開き、大学の教壇にも立つ。アフリカで活動した際、バッタによる農作物被害を知り「食糧危機と昆虫食への気づきになれば」とバッタの粉末を混ぜたコーヒーも考案。マルチな肩書に昆虫食開発者としての活動も加わった。
 このベーシストは都内在住の今沢カゲロウさん(52)。中学二年でベースを始め、早大の学生時代は毎日、学食前で演奏した。在学中にプロとなり、卒業後は海外で活動。一九九八年、ベルリンでの百五十万人規模の音楽イベントでソロ演奏し、二〇〇六年にメジャーデビューした。〇六、〇七年のヨーロピアンベースデーでは世界のベーシスト十人に選出された。
 フレットのない特注の六弦エレキベースを操る。高速で巧みな技術から海外では「ベースニンジャ」の異名も。今沢さんのクロスハンドタッピング=写真(上)=は「ニンジャ弾き」と呼ばれ、二十一枚のアルバムを出した。
 なぜ音楽活動と昆虫が結び付いたのか。「学生時代、もっとうまく弾きたいと思ったとき、昆虫の動きに注目した。昆虫の機能的な動きをベースの演奏技術に取り入れることはできないかと研究した」

今沢さんのアルバム「兆」のジャケット。昆虫の絵は今沢さん作

 動きを知るには生態も知らなければならない。写生や鳴き声の録音を重ねた。絶対音感を持つ今沢さんは鳴き声を譜面にし、楽曲に取り込むこともしている。ウマオイやアブラゼミの鳴き声を流しながらクイーンやピンク・フロイドの曲を演奏するのはお手のものだ。
 バッタコーヒーの発案は二〇一九年、二十一枚目のアルバム「タクテクレタ」を制作するためルワンダを訪れたのがきっかけだった。近隣国で長距離を移動するワタリバッタの一種、サバクトビバッタが農作物に甚大な被害を与えていることを知り「虫の食害がある一方、虫を食べる文化もある」と、アフリカ産コーヒーと昆虫の組み合わせを思いついた。

ワタリバッタコーヒー

 帰国後、焙煎(ばいせん)の専門家などと試行を重ね、ケニア産コーヒーとタイで生産されている食用バッタの粉末をブレンドした「ワタリバッタコーヒー」を完成させた。昨年十二月からドリップパック一袋(十グラム)を七百円で売り出している。飲んでみたが、苦味や酸味は薄くフルーティー、干し草のような香りがする。虫入りと聞いて構えていたから「飲めますね」と言ったら「『飲める』ではなく『うまい』と言っていただけたら」と返された。
 コーヒーのパッケージにはルワンダに伝わる幾何学模様と今沢さんが描いたワタリバッタがあしらわれている。
 昆虫画家としては一七年から活動。これまでに渋谷、代々木上原、国分寺のギャラリーや北海道・帯広の美術館で五回の個展を開いた。個展やライブ会場で作品を並べると数万円で売れるという。

今沢さんが描いたサバクトビバッタ

 四国大学(徳島)で特認教授として音楽を教え、幼稚園や保育園、小中学高校、大学では昆虫をテーマに講演もしている。
 コロナ禍とあって、これまで年二百五十回はこなした音楽ライブができず、有料オンラインコンサートが中心。それでも世界二百十六都市に発信した。
 昆虫食開発者として研究も進めている。「コーヒーは第一弾。いま注目しているのはザザムシ(長野・天竜川上流部にすむカワゲラやトビケラなどの幼虫の総称)」と余念がない。

 ワタリバッタコーヒーは今沢さんの公式サイトhttp://www.bassninja.net/で扱っており、購入者特典音源が付く。昆虫食を扱う「TAKE−NOKO」=台東区西浅草1の3の14 2階、電03(5830)7970=でも販売している。

文・桜井章夫/写真・沢田将人
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