米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、2024年末、防衛省は大浦湾側の軟弱地盤改良工事に着手した。国側による工事の設計変更承認の代執行から1年。政府は「問題なく完成させられる」と強調するが、砂の調達が課題となるほか、難工事に工期・費用とも膨らむ懸念が広がる。反対の民意を押し切り、国策として進む新基地建設の行方は。(宮畑譲、中川紘希、安藤恭子)
◆「防衛省のいつものやり方。何の意味もない」
「『年内着手』をアピールしたい防衛省のいつものやり方。何の意味もない」。辺野古沖の海上でカヌーに乗って抗議活動を続ける「辺野古ぶるー」のメンバー、鈴木公子さんが「こちら特報部」の取材に吐き捨てるように言った。
大浦湾の軟弱地盤を改良する工事は、海底に打ち込んだ筒の中に砂を流し込んだり、砂を締め固めたりして、約7万本のくいを打ち込む。今回は、くい打ちの際に土壌が舞い上がるのを防ぐために砂を敷き詰めるという、くい打ちの前段階で、作業船のショベルカーが横付けされた台船から砂を海中に投下した。
鈴木さんらによる年内の抗議活動は12月27日に終えたばかり。28日は土曜日で、鈴木さんは「仕事納めも終わった後に作業員を働かせ、船1隻分の砂を捨てただけ。全体の工事からすれば微々たるもの。無駄な自然破壊でしかない」と憤りを隠さない。
◆玉城デニー知事も「なぜこのタイミングなのか」
今回の作業着手が沖縄県に伝えられたのは前日27日午前。玉城デニー知事は同日午後、「なぜこのタイミングなのか、非常に疑問だ。環境への影響などを注視する」と述べた。
防衛省の計画では、埋め立て用の砂2020万立方メートル、東京ドーム16個分超が必要だが、砂不足が言われている。政府は沖縄本島南部を採取候補地に選んだが、沖縄戦で亡くなった多くの人の遺骨がまざった土砂が使われる可能性があり、反発は根強い。鹿児島県・奄美大島も検討されているが、こちらも生態系が崩れかねないと指摘されている。
◆土砂を搬出する車両が農道を損傷
そうした中、2024年11月には、沖縄県うるま市の宮城島で土砂搬出が始まった。
辺野古新基地建設に反対する、うるま市島ぐるみ会議共同代表の照屋寛之・沖縄国際大名誉教授(政治学)は「数年前から山が削られていて、いつかは運ばれるだろうと思っていた。ただ、前触れは全くなかった」と振り返る。照屋さんによると、搬出が始まった当初、1日に出て行く車両は約60台だったが、12月には約100台にまで増えたという。
搬出車両が行き来する農道が損傷し、農作業に支障が出る可能性もある。照屋さんは「もともと農道をつくる時に設けられた往来の制限を超えている。農道の目的外使用だ」と批判する。
◆抗議の「暗黙ルール」が変更された
土砂投入開始からも6年がたつ。土砂が搬出される名護市の安和桟橋で続く抗議活動を巡っては2024年6月、搬出するダンプカーに巻き込まれ、警備員の男性が死亡、抗議活動をしていた女性が重傷を負う事故が起きた。中断していた搬出が8月に再開後、警備は厳しくなったという。
照屋さんは「事故前は、抗議する人が1人、出口を横切った後、ダンプカーを1台出すという暗黙のルールがあったが、事故で横断が認められなくなった。表現の自由も認められないということだ」と批判する。鈴木さんも、搬出箇所が増えたことで、抗議活動が難しくなっていると訴える。
◆基地建設で生まれる利益の行方
「なぜ基地建設は止まらないのか」。東京都江東区の塾講師、加藤宣子さん(55)は、辺野古新基地建設に反対の立場から、図書館に通い受注企業の社史などを調べてきた。「基地建設は大手ゼネコンをはじめとした企業なくして成り立たない。利益の大半は本社がある東京に吸い上げられていく。本土に住...
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